「普通」という名の罠
先日、ある方のメルマガに『アメリカに住んでいた時「●●」という単語は一度しか使ったことがなかった』という記載がありました。
『日本では当然のように教えられるけど、アメリカ人の友達に聞いても「そんな言い方しない」「気持ち悪い」と言われた。だから●●は「普通」使わないと考えた方が良い』と。
書いた方の主張は、「だから使うべきではない」なのですが、このメルマガには肝腎な情報が抜けています。
この人が
何歳の時のことで
何年前のことで
どんな目的でアメリカに行き
どんな生活水準を送り
お付き合いのあったお友達はどんなクラス(階級)の人だったのか
等です。
言葉は生き物です。
数年経てばそれまでなかった言葉が良く使われることもあれば、全く使われなくなる言葉もあります。
また、若い世代の人たちがよく使う言葉と、年齢が上の世代の人たちがよく使う言葉も違います。
そして、日本ではあまり意識されませんが、英語圏はハッキリ階級が分かれている社会でもあります。
え?アメリカって自由な国だし、昔の貴族や奴隷制度はなくなったんだから身分なんて皆一緒でしょ、と思うかもしれません。
確かに、アメリカは自由の国です。
ですが、自由だからこそ、頑張った人と頑張らなかった人、何らかの事情で頑張れなかった人との落差が激しいのです。
日本よりも「高学歴社会」かも。
しかも、日本で学歴といえば「どの大学出身か」だけが問われますが、アメリカでは「どの大学やどの大学院で、何の学位を取ったか」まで問われるそうです。
一流大学出身者と、低いランクの出身者とでは、初任給が二倍違う、という情報もあります。
日本なら、せいぜい「大学院卒」「大学卒」「高校卒」くらいの大ざっぱな分け方だし、それぞれの初任給が倍違うなんて話、ほとんど聞いたことがないです。
レイヤーがハッキリしているので、当然レベルが近い人たち同士で仲良くなっていきます。
そうすると何が起きるか?
レベルごとに使う言葉が違ってくるのです。
時々「霞が関のエリートだからって難しいコトバばっかり使いやがって」なんてセリフを、某テレビの刑事モノシリーズで捜査一課の刑事さんが苦々しげに言っていますが、アレが実際に起こるわけです。
たとえば、
Thank you very much!
We’re deeply appreciated it.
は、どちらも「感謝」を伝える表現ですが、誰でも知っている表現と、それなりに勉強しないとわからない表現があるのです。
うーん、これくらいみんな知ってるかぁ。もうひとつくらい例に出すと…
たとえば「おしゃべりな」という単語。
chatty は簡単なので誰でも知っていて
loquacious はそれなりの語彙力が求められる
(らくうぇぃしゃs、と聞こえるか)
とかでしょうかねぇ(ニュアンスもちょっと違うけど)。
何が言いたいかというと、今ではインターネットなどで簡単に情報を調べられますが、「普通は」というコトバの裏には、対象となる「普通の人」が誰なのか?がわからないと、鵜呑みにできないものもあるので注意しましょうね、ってこと。
今回は英語の表現に関して「いや、それはちょっと乱暴ではないかい?」と思って書きましたが、これ、日本人同士でも言えることです。
「普通あんな言い方する?!」
「恋人へのプレゼントに、普通これ選ぶ!?」
「新入社員だったら普通そこは遠慮しない?」
「先輩だったら、後輩に普通お金を出させないでしょ!?」
などなどなどなど!!!
気をつけて聞いていると結構な頻度で登場しますし、案外自分でも使っているものです。
「普通は……」と言い始めたら、自分の思考回路は危険信号かも、と思った方がよいかもしれません。
……自戒を込めて。
↓↓↓こういうレベルのまとまりはアリ↓↓↓かわいい♡